久しぶりに会った母の顔に髭があった。

口髭、口角の上あたり

ギョッとしたけど、母には言わなかった。

そのとき、母は80歳をとうに過ぎて

もう、顔の手入れも気にしなくなったのかと思った。もう…いいんだって思った。

若い頃の母はお化粧品にも拘り、自分の身なりの整えにも気を遣ってはいたけれど、

「もういいんだ」って思った。


だんだん母の年齢に近づき目が悪くなって、鏡もよく見えないことがある。字は完全に老眼が必要。そんな不自由な目で眉を描いたり、アイライナーやブロウを引くことが困難になってきた。

且つマスク生活で気を緩めていたら、

口角の上に触れるものがあった。



調べると、女性は閉経後女性ホルモンが少なくなり、男性ホルモンとのバランスで髭が濃くなったり、生えたりすることがあるらしい。


そっか…

これだったんだね。

あのとき、ホルモンの知識を持って、見えない目の不自由さを私が知っていたら、母の髭を剃ってあげれた。


母の年齢に近づいて

母の思いや、不自由さを一つずつ知り感じるとき、「ごめんね」って思う。

気づいてあげれなくてごめんねって…