父の涙

大正生まれで、戦争を経験して、母親を自分の出産のために亡くした父は、強く優しい人でした。そんな父の目が真っ赤になったのを見たのは二度。


一度は私の嫁入りの出立ちのとき、

親戚や近所の方に来ていただいてお祝いをしていただくのですが、

親戚の人に「三人子供がいても、ぽろんちゃんが一番可愛かったやろ?」と聞かれた父の目は真っ赤でした。大きく歪みそうになる顔を笑顔でやっと堪えていました。


もう一度はフランダースの犬を見ているときでした。テレビの真ん前に座布団を敷いて、これは涙を流して見てました。


思い出というのは、わざと作られるものではなくて、両親が私を思うその感情が私の大切な思い出になりました。

父が亡くなって35年…

もうすぐ父が亡くなった歳を追い越してしまいますが、思い出は当時のままで、こんなおばあちゃんになった私を優しく包み込んでくれます。辛いとき、悲しいとき…両親の思い出がどれだけ私を支えてくれたかわかりません。