兄
市販のパイシートを使って、アップルパイを作りました。
母は一つ違いの兄のために買わなければならないものは、私にも色違いで買ってくれました。
自転車、傘、雨靴、木琴、筆箱…
兄が小学校に入るために揃えた文房具は小学校に入る前の私も持ってました。
兄が字や足し算引き算を教えてもらっていると、隣で聞いていた私が先に覚えたので、
兄は泣いて私を叩きました。私は叩かれても泣かないので強い子だと言われてました。
父を真ん中にして、兄と川の字に寝て
父の顔を取り合っていました。私に向けると、兄が自分に向けて、父の顔は忙しく左右に振りました。そんな様子を母は嬉しそうに見てました。
いつも一緒にいて当たり前だったのだけど、高校から兄は寮に入って、その頃の記憶があまりなくて、記憶にあるのは兄が話してくれる寮生活。兄は初めての外の世界を楽しく話してくれて、私がその話を友人に話すと友人達に「ほんまにお兄さんが好きなんやなぁ」って言われました。
母が亡くなり、私が心を壊したとき
自分から電話などかけてこない兄から電話がかかってきました。
「辛かったらいつでも帰ってこい。
お兄ちゃんの血の繋がりがある肉親は、
もうおまえだけなんや!」って言ってくれました。私は一度もお兄ちゃんと呼んだことはないのですが、(名前にちゃんをつけて呼びます)
兄は自分のことをお兄ちゃん…って私に言います。
犬を拾ってくるだけで、お世話は私。
どっちが年上なんだか…って感じで大きくなりましたが、兄は、お兄ちゃんだと思っていたのでしょうね。
お互いに老いて、今度は病気の心配です。兄は大きな病気を二つ持ってますが、
こればかりは順番ではないので、私は兄より先に両親のところに行きたいと思っています。
「お兄ちゃんより先に逝きやがって」
そう言って泣いてる兄を、両親と笑って見たいと思います。