岡埜栄泉

元気な頃の母はよく食べました。

大正生まれでしたので、食べるものがあまりなかったのでしょうね。

自分でおやつも作って(ハイカラでないもの、おはぎとか、生姜糖みたいなもの)を作ってくれました。


実家に里帰りするときは、何をお土産に食べさせてあげようか…って楽しみでした。

あんこが好きな母に東京の「岡埜栄泉」さんの豆大福を買って帰ろうとしたことがありましたが、日持ちができないからと諦めたことがありました。


私が実家に帰らなかった間に母は、流動食をやっと少し食べるような身体になってました。

ご飯も、おかずも全てが粥状態で、それを看護師さんが全部を混ぜて母の口に入れてました。


私は看護師さんに「私が介助をさせていただいていいですか?」と話して、母に食べさせました。「これはカボチャだよ」「これはお豆かな」「美味しい?どう?」…

母は視線の合わない目でモグモグするだけでした。もちろん、豆大福なんて食べられません。


母が亡くなった今も

美味しいものがあったら、母に食べさせてやりたいって思います。

嫁に行ってからは、一緒に過ごす時間は殆どありませんでした。してあげたい…って思ったときにしないと、「いつか」はこないものということも、そうなってから知りました。