老いるということ、学ぶこと

今から20年ぐらい前にヘルパー研修を受けました。真実はわからないけど、一緒に受けた先輩がご自分の母親を介護するために、資格を持っていれば自宅介護に有利だということでした。私もいつかくる姑の自宅介護を考えての取得だったので、介護の仕事に就いたことはありません。


四つの施設研修がありました。


デイサービス

特養

有料老人ホーム

在宅


デイサービスの利用者さんは、日中だけの施設利用なので、お身体はお元気で一人で家に居ることの心配があるからの入所だと思います。

女性の方はグループになって話しをされていました。ある利用者さんはニコニコと「私は嫁のために此処に来ているのよ。嫁が助かるから」とおっしゃってました。


特養と有料老人ホーム、

どちらがどうだったかは忘れましたが


当時、疥癬が流行っていて

私達は施設から戻ってきたら家に入る前に洋服を着替えて、着替えた服を煮沸消毒するように言われました。

また、入浴介助では、「浴室用の靴を履くように、水虫菌がいるから」と言われました。

ご利用者さんは、知ってか知らずか…

知っていても仕方ないです。


利用者さんは、


脱走しようと入り口で扉が開くのを待っておられる方


「息子が迎えにくる」と来ない息子さんをエレベーターの前で一日中待ってる方


「おとなしいしてな、ここを出されたらどうするんや!」ってベッドで息子さんに怒鳴られている方(施設から息子さん呼び出しを受けたのです)


日中、娯楽室で身体をくの字に曲げて寝ている方(夜寝てもらわなきゃならないから、昼に眠くてもベッドで寝させてはもらえないんです)


そして、私をローカの隅に呼んで

腕を思いきりツネる女性


私はとにかく辛かった。疥癬が流行っていても、水虫菌がいても、そこで暮らさなければなりません。

家に帰りたくても、帰れません。家族がいない施設がこの方達の家なんです。

眠くてもベッドで寝てはいけません。

一生懸命に生きてこられた方の最後の姿です。


在宅介護の研修は

家族さんが帰って来られるまでに、冷蔵庫の中のある食材で晩ご飯を作り、利用者さんに食べていただきました。

穏やかなおばあさんで、認知症が少しみられるとかで漢字のドリルを楽しそうにされてました。簡単な漢字でした。何をしても、「ありがとう」と言ってくださいました。

私達が帰る時間と交代に小学校のお孫さんが帰って来られました。


私が研修で教わったことは

「尊厳」でした。

利用者さんが今まで生きてこられた人生を尊重して、人間らしく生きていただくことです。

介護は本来尊いことのはずなんです。


今日は長々と

写真もなく書いてしまいました。


最後に…

研修中、一人のおばあさんに

ローカの隅に連れていかれて、何度も腕をツネられて、私の腕は青痣だらけでした。


険しいお顔のこの方の若い頃を思いました。きっと辛いことが多かった人生だったんだろな…


私達の大先輩は老いた姿でまだ私達に教えてくださっています。

その姿でまだまだ学ばせてくださっているように思います。